二人で一緒に、これからも

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Adg00.gif
アレックス・ランバート//関係:夫婦//傾向:ほのぼの//時代:大人 【視点:ヒロイン】※wedding -Alex ver-の続きです。




私とアレックスはイタリアの結婚式を終えた後……――――日本を目指していた。


「はあー……やっと着いた。やっぱり日本の夏って本当に暑いんだよね…」

「…………」


目的は法事。それも私の母方の親戚一同に今日アレックスを紹介する予定になっている。
結婚式を終えてハネムーンの為に互いの休みを調整していたのだが、そんな時に日本に住んでいる母に結婚式の報告をした日。
……――――近々遠くの親戚まで集う大きな法事があるから、アレックスを紹介しに来てもいいんじゃないかと、という提案だった。

確かに二人っきりで結婚式を挙げたのだから見に来れなかった母親にはアレックスときちんと報告したい気持ちは強い。
一旦電話を切ってからアレックスに事情を説明すると、二つ返事で行くと頷いてくれた。

なので今、私達は空港から寄り道もせずに真っ直ぐに親戚の家を目指している。
都会暮らしに慣れた為か、向かう途中から段々と自然が多くなると気分が高揚してくる自分がいた。
一日に数本しか通らないバスに乗り揺られること数十分。降りた先に待ってるのは、炎天下の道をひたすら歩くことだけだった。

ミーンミンミン…――――。

視野に広大に広がる森の木で蝉がけたたましく鳴いている。
大自然に囲まれた山奥の田舎。車一台随分と目撃していない広いアスファルトの道を私とアレックスは歩いて居た。

そんな彼はマイアミの海辺にでも合いそうなパリッとした黒いサングラスをしているのだが、正直今の風景と全く合っていない。
ガラガラ、とキャリーバックの車輪を転がしながら暑さの為か口数が減っているアレックスを私は一生懸命励まし続ける。


「アレックス、もう少しだから」

「………ぜ…」

「え?」

「……なぜ車一台通らない上に、人も全く見かけないんだ?」


暑いことよりも、日本の田舎風景に興味津々なアレックスは……――――バスの辺りから、度々写メを撮っていた。


(アレックスなりに、はしゃいでる……のだろうか)


日本を観光したことは無いと聞いていた。況しては皇族の育ちのアレックスが日本の観光名所でも無い限り、こう言った場所を見る機会が無かったのも頷ける。
なので私はガイド役になり空港から降りると早速日本の良さをアピールし続けていた。


「日本の田舎はこうなんだよ。暑さの所為もあるかも知れないね。あ、見てよ、あの大きい山」

「山には興味が無い。それより……あの石の人形は何だ?」

「あれはお地蔵様だよ。お供え物をしたり手を合わせてお祈りしたりするの」

「…おじ……ぞ……?」

「お地蔵様」


神様だからと写メを撮ろうとするのを慌てて止めておくと、アレックスは大人しく携帯をズボンのポケットに仕舞ってくれた。
先程からこの調子だ。暑さの所為もあって私は足早に親戚の家へと辿り着こうと急いだのだった。



***



宮大工で作られた昔ながらの風情ある家作りに、アレックスは惹かれるものがあったのか真剣な眼差しで観察している。
そんな彼を引っ張る様にして玄関の扉を開けると家に居た全員が此処へ来たのでは無いかと言う程、人数多く賑やかになった。
その原因は何を隠そう私がアレックスを連れて来たからである。皆が興味気にアレックスを見ていると、彼は口許で微笑みを浮かべる。


「はじめまして。アレックス・ランバートといいます…よろしくおねがいします」


彼は流暢な日本語で挨拶をすると、何故か「おお」と感動する声が一斉に聞こえてきた。
アレックスは私との結婚を意識し始めた頃から、日本語を勉強してくれていた。なので今では日常会話位なら日本語でも通じる程だった。

けれど私は恥ずかしくなり両手を振って止めさせようと必死になってくる。
然しそれには構わず、と言うより押し退けられる勢いであっという間に親戚はアレックスを囲んでしまった。


「あらまー…綺麗な人だこと。お人形さんみたいな顔しとるね」

「本場のきんぱつ、っちゅーのは違うもんさなあ…」


(本場のきんぱつって何よ!)


「もう止めてよ!アレックスは見世物じゃないんだから!」

「はいはい……ごめんね、ふふ…」


皆が柔らかく微笑みながら、アレックスを歓迎すると彼も雰囲気が解ってくれたのかほっとした様に肩を下す。
靴を脱いで上がると二人で一番奥にある客間の部屋に通された。……そこには――――畳の上に母が座って待って居た。
故郷の土地に降り立つより、母の顔を見た瞬間が一番日本に来たんだと実感出来る。


「お母さん!もう着いてたんだ」

「久し振り…日七、アレックスさん」

「おひさしぶりです」


母とアレックスが逢うのは初めてじゃない。結婚をしようと決めた時にきちんと挨拶をしに日本へ来た事があったからだ。
私達は自然と母と向き合う様に正座して座ると、母は手を振って「足を崩しなさい」と小さく微笑む。
するとアレックスは一度背筋を伸ばしたかと思えば両方の太腿にそれぞれ手を置き、丁寧にお辞儀をした。


日七さんと結婚することができました」


つっかえる事の無い綺麗な日本語で喋るアレックス。その真剣な横顔を見て胸が熱くなる。


「…ふたりで、しあわせになります」


私も一緒に頭を下げると、少しの間だけ二人でそうする事によって夫婦の絆がより強くなっていく気がした。


「はい。……そそっかしい娘ですが日七を、しっかりと頼みますね」


母を見れば嬉しげに微笑む目尻からほんの少し涙が見えると、私も耐え切れないとばかりに貰い泣きをする。
そんな私の頭をくしゃりと撫でてくれるアレックスを見れば優しげな瞳で見守ってくれていた。



***



法事も何事も無く終われば、夜に待ち受けているのは盛大な宴だった。
案の定、予想通りな光景になったのはアレックスの左右にしっかりと陣取る親戚のおばちゃんと、おじちゃんが居たからだ。
お母さんのお兄さんであり泊まらせて貰う本家の主、源太郎おじさん。と、その奥さん。


「子供が産まれたら、どっちの髪色になるんかの?」


(ついに始まった……――――)


耳を欹て無くても解る程、内緒話でもする訳でも無く聞こえてくるのは子供の話題。


「楽しみねえ…。名前はもう決めてる?」


(決めてるわけ無いでしょ!)


親戚一おせっかい焼きな二人が、左右から責め立てられるのは想像してたいたのだけれども。
焼酎の瓶をそれぞれ持ちながらアレックスのグラスに、なみなみと注いでは距離感を縮めていくのだ。
嫌な思いしてたら如何しようと内心ハラハラしながら窺っているも、意外とアレックスは和やかな雰囲気で酒を飲んでいた。


日七ちゃーん、煮付け手伝ってくれんー?」

「はーい!」


私は心配しながらも呼ばれた台所へ急ぐ。


そして随分そこに居てしまった。そもそも任された手伝いから逃げる訳にもいかず、長箸を持ちながら煮付けの鍋を見ていると、突然居間の方で悲鳴が上がる。


(え!?な、何?)


慌てて火を止めて向うと片隅の方で誰かが倒れてるのが見える。駆け寄って確認すれば、それはアレックスと話し込んでたおばちゃんだった。


「おばちゃん!?」


苦し気な顔も浮かべてなければ、何処か怪我をしてる様にも見えないのだが意識が無いのだけは解る。
おじちゃんは相当酒を飲んでるのが一目で解る程真っ赤な顔をしており車など出せる状態では無い。
すると直ぐ様にアレックスはおばちゃんを背中に抱えると、おんぶの状態で力強く立ち上がった。


「迷ってる暇は無いだろ、病院まで行くぞ!」

「えっ!でも村の診療所までは歩くと30分は…」

「いいから急げ!」

「は、はいっ!」


私は懐中電灯を用意させると、アレックスと一緒に外へと飛び出した……――――。



***



1時間後…――――病院に向かう切羽詰まった足取りとは違い、帰りはのんびりとした空気を纏っている二人。
真っ暗に近い田舎の道を歩きながらも、懐中電灯の光をプラプラと草や木に向けては溜息を零した。


「大事じゃ無くて良かった…」


おばちゃんは、要するにただの飲み過ぎだった。医者は様子見として明日まで診察所で見てくれるとあって私とアレックスだけ帰ってきたのだ。


「…………」

「……アレックス?」


先程からずっと無言なアレックスは、暗がりでも表情さえ強張って見えた。するとポツリと溜息に似た言葉を零す。


「すまない…」

「アレックスは何も悪く無いよ?」


大丈夫、と伝える為に歩く事で揺れてる彼の手をそっと掴んでしまうと、そうすることが当たり前な様に直ぐに指同士を絡めた。
こうして二人で手を繋ぐと黙ってても気持ちを分け合えるようで私達は良くこうする。


「それに謝るなら私の方…親戚が迷惑かけてごめんね」

「謝るなよ。当然のことだろ」


懐中電灯の灯りを消してしまうと足元を照らすのは月の光だけ。それも今日は一際明るく夜の自然を深い青で染めていた。


「ここは綺麗だな…」

「そうだね」


自然と共存するのは時に厳しさもあるけれど、自然の豊かさをより身近に感じれるのは素晴らしいと思う。
夜の虫達が鳴いてると、お互い黙ってしまう。けれど無言の空気が重い訳では無かった。


「……小さい頃は夜に歩く何て怖い以外無かったけど、今は全く平気なのは大人になった証拠なんだね」

「まだまだ危なっかしい所も多いけどな」

「多くない。私だってしっかりしてきたし」

「何処がだ?」


くすと笑う声は、あまりにも小さくて夜の闇に溶けそうだ。けれど自由な方の手は私の頭をそっと撫でてくれる。
指先から伝わる優しい手付きに思わず足を止めると、アレックスも一緒に立ち止まった。


「アレックス……」

「……ん?」

「日本に来てくれて有難う。やっぱり私の生まれた故郷だから…嬉しかった」


色んな国へこの先だって行くだろう。けれど、矢張り日本は特別なのだ。
アレックスと歩む人生において、永住はきっとアメリカになる。なので数える位しかもう日本へ来れないかも知れない。
そう寂しくなりかけた気持ちを下から掬い取ってくれる様にアレックスは静かに口を開いた。


「また、来ような…」

「うん……」

「そんな寂しそうな顔するな。それに……もしかしたら毎年来ることになるかも知れないだろ」

「毎年?」


言葉の意味が解らないと顔に書いてあるのか、瞬く目を見たアレックスは目許柔らかに微笑んだ。


「お前は、自分の親に……孫の顔も見せないつもりか?」

「!」


孫とは、つまり私とアレックスの子供……――――瞬く目は更に見開いてしまうと、急に焦りどもりまくる私。


「えっと!その!あの!」

「何、焦ってるんだ?」

「だって…」

「俺達、家族になったんだから当然起こり得る未来の話だ」

「…っ」


自分が夢見てたことに、アレックス自身から言葉にして告げられると気恥ずかしさで胸がいっぱいになった。
私は反射的に走ろうとしたのだが、グイと逆に手を引かれるとアレックスの胸に強引に引き寄せられる。


「…全く。出逢った高校の時から、相変わらず逃げる癖は変わら無いな」


後ろ頭に手を置かれ、もう私の体はすっぽりとアレックスの体で包まれてしまえば身動き一つすら取れなかった。
けれど、そこがもう私の一番求めてる場所でもある。……――――アレックスの鼓動を一番に感じれる腕の中に。


「今日みたいに色んな出来事が、この先何度もあるだろうけど……。
……――――それでも二人で一緒に、これからも乗り越えていこうな」


穏やかな声が静かな夜に響く。こんな真夏の夜の暑さでも、彼の温もりが心底落ち着くのはこの先も変わらない筈だから。
心が安らいでくるのを感じなら私は大きい頷きと共に広い背中にそっと手を回した。


END

Presented by HINANA
Thanks for reading to the end.



GGファン企画の為に執筆致しました。テーマの真夏の夜の夢=夜の田舎道で未来を語るシーンが浮かんだので。
アレックス結婚式の続きものです。アレックスの言ってたことが実現したらいいなあ、という願いも込めて。
S1から色んな壁を乗り越えてきた二人はこの先もずっと力を合わせて乗り越えていくんだろうな。
結婚という漢字以外アレックスの日本語は、ひらがなにしております。
ちまちま書いてたんですが期限内に献上出来て良かった( ;∀;)

wedding -Alex ver- (前回)
ページトップ