夏旅行 ~海~

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城戸紡//関係:恋人//傾向:ほのぼの 【視点:城戸】※ボル版ワンドロ用作品(お題:夏休み)




夏真っ盛り…――――盆休みっちゅー訳で熱海の海に旅行に来とる。人もぎょーさん、おって……は、ええんやけど。
さっきから彼女がおらへん。……シートの上にも。周りを幾ら見渡しても、知らん人、人、人ばっかりや。


「って…――――迷子かい」


俺は燦々と照りつく太陽の下、山盛りになったカキ氷を二つ持ちながら思わず一人でツッコんだ。
ありえへん。こない歳になっても迷子になる奴何ておったんやな。何て感心めいた気分になっとる場合ちゃう。

全く何処いったんや。波見て一足先に泳ぎたくなったちゅー新手のボケか?…いや、あの子に限って。
…――――あかん。めっちゃ狼狽えてる俺がおる。


「探さな…このカキ氷どないしよ。…置いといてええんかな」


一先ず此れを両手に持って歩き回るのはしんどい。俺はシートの上にカップを二つ置いてから探しに行った。
せやけど数十歩進んだ所で俺の前に立ち塞がる二人の女が現れた。……なんやねん、こっちは急いでるっちゅうねん。


「一緒に遊びませんか?」

「は…?」

「お兄さん、凄くかっこいいから思わず声かけちゃいました♪」


歳は20そこらか。大学生なんか解らんけど、あかぬけた雰囲気からして勝手に分析してしまう。
いや、これ明らかな逆ナンやろな。…俺何か、ナンパしてどないすんねん。いや、言葉通りに遊びたいんやろうけど。
そもそも今日はエリートモードでも何でも無い。汗掻くから眼鏡だけは外してもうたけど、髪は綺麗にセットしてる訳でも無しに。


「……ええんか?」


俺の言葉を素直に肯定と捉えたのか、パッと嬉しげな笑みを浮かべた二人組は顔を見合わせる。
せやけど、俺が続けるのは予想もしない方向へと転がす……――――業と、指でわしゃわしゃと自分の前髪を崩してボサボサにさせながら。
奢られるのを当たり前に、男の財布目当てにしとる奴には一番効く台詞が、これや。


「俺、無職やねん。金何か全然無いんやけど、それでもええんやったら」

「………」


目論見通り、そそくさと逃げる二人組の小さくなる背中を、冷めた眼を向けながら漸く本音を零す。


「アホ、社会人なめんなや…。好きな女の一人くらい食わせていけるっちゅうねん…」


いらん時間を割いてもうた、と今度こそ歩みを進めると人の間を探してみるものの、視線の先を見ればあっさりと彼女は見付かった。
波打ち際にて誰かに腕を取られているのが見て解ると、俺は半分程瞼を閉じれば怒りのオーラ全開でズンズンとする足取りで近付く。


「おい、コラ、何しとんねん。その手離さんと、どつく……――――って誰や、この子供」

「つ、紡さん!迷子なんです!」


そういえば割って入った時に無意識に視線は随分下やったと気付いた。良く見れば泣きべそを、かきながら腕にしがみついてる男ん子がおる。
こない人がおったら迷子にもなるわな。
……――――って待て、待て、今まで迷子になってたのは何処の誰や。


「迷子かと思うて探しに来たんは俺の方や!」


今度は相手が居てこそのツッコみに成功した俺は、彼女と迷子を引き渡す為に係員のテントを目指すことになった。
事の発端はシートの上で待ってた所を、目の前を泣きながらうろうろしてる子供を見かねて声を掛けたらしく。
後、あっち、こっち、と両親が居ると言われては素直に付き合ってた……――――らしい。


「抱っこ、俺が変ったる」

「いいんですか?」

「ええで」


にっこりと営業スマイルを決めたのは、このクソガキ……いや子供、これもちゃう。男と男の見えない攻防戦があるからや。
抱っこ、すなわち抱き付く事で剥き出しになった胸の部分に顔が当るちゅう訳で……――――彼氏として見過ごす何て出来へん。


「僕、お姉ちゃんがいい!」

「我儘言うたらあかんやろ。ほかすぞ」

「紡さん、子供相手にドスの利いた声出すの止めて下さい…」


半ば無理やり引き剥す勢いで細っこい両腕の下に俺の手が入ってしまえば、後はこっちのもん。
ぐいっと力の限り引けば糸も簡単に離れてしまう。然し下すんは熱い砂浜がそこにはある…。
俺は軽々と自分の肩に乗せてしまうと、肩車でテントに向かう事に決めた。


「わー!お兄ちゃん、凄い!高い!」

「あんま、はしゃぐと落ちるで。……しっかり掴まっとき」


無邪気に楽しむ子供を落さん様に、しっかりと足を掴みながらも三人で歩き出すと擦れ違いざまに誰かが言う。


「素敵なパパ」


――――……え。


隣を歩いてる彼女を見れば一緒に聞こえたのか、ふわりと微笑みを浮かべた。
いや、笑っとる場合ちゃうやろ。俺はその恥ずかしさをお裾分けする。


「俺がパパやったら、日七がママやし…」

「え?」

「せやから、俺達…夫婦に見えたんちゃう?」


俺も肩車ではしゃぐ子供と一緒や。
彼女が途端に恥ずかしがる様に唇を引き結んでしまえば、その愛らしさに何時も笑ってしまう。



***



「はあー……なんやどっと疲れたわ…」

「紡さんの肩車で一気に上機嫌になって助かりました」

「肩車の一つや二つで機嫌も直るんやったら、なんぼでもしたる…」


漸く海の上。借りた大きな浮き輪を二人で掴み、飛沫一つ上げず波の揺らぎに身を任せていた。


「それにしても、夫婦に見られる何て気恥ずかしかったですね」

「……嫌やったん?」


浮き輪一つ挟んで、わざと顔を近付けて覗き込む俺に対して当然恥ずかしそうにするんかな、と思ってた俺に…。
突然覆う影が出来たのはこっちの方。俺の唇に掠める程の温もりを感じたのは一瞬やった。


「これが私の答えです…」

「っ…」


あかん。それ反則やろ……――――少しだけ、しょっぱいキスは夏の味がする。
仕返しなのか、そうでは無いのか。どちらにしろ俺は熱くなる頬を冷ます為、海にぶくぶくと顔だけ沈めた。


END

Presented by HINANA
Thanks for reading to the end.



初つむつむ執筆。殆どが標準語で執筆なので大阪弁で全文書いてみたくて執筆してしまった。夏休みのテーマで二人で旅行へ。

※ほかす=捨てる
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