Lady Killer

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Fdg00.gif
フレッド・カーター//関係:不明//傾向:微エロ//時代:大人 【視点:ヒロイン】※主背景はオリジナルになります。




※IFの世界。本編とは違う設定の為に此処から先は全てにおいて自己責任でお読み下さい。



重たい瞼を開けると、ベットの上で心地良い温度を感じた。
白いシーツに包まれながらも、まるで鎖に繋がれた様に手足が動かない為に気怠気な視線だけで辺りを探る。
カーテンが閉まってる筈なのに、室内が明るく感じるのはもう太陽が昇っている証拠だろう。
でも、私、何時カーテンを閉めたのかな。いや、覚えて無いだけで閉めたのだろう。何て、ぼんやりする思考の渦で勝手に自分が結論付ける。

昨日は行きつけのバーで泥酔する迄飲んでしまったものだから、二日酔いは覚悟していたのだが。

けれど釣り針みたく心にピンと、何かが引っ掛かる。それでいて妙に胸騒ぎがした。
然し、その胸騒ぎも直ぐに吹き飛び引き換えに戻ってきたのは、もっと最悪な気配だった。
何てことだ。とんでも無い事が今起き始めている。そう確信したのは……――――此処が私の部屋では無いと気付いたからだ。


「ん……」

「!」


もぞ、と突然私以外の気配が隣ですればカーテンから反射的に動いた視線が、そこへ強く引きつけられる。


(だ、誰!?)


釘付けになって見詰めてしまったのは、男性の肩幅の広い大きな背中が間近くにあった所為でもあるのだが大問題なことが此処で一つ発生した。
背中は肌色しか一切見えない。そう彼は裸だったのだ…――――。

朝起きたら、知らない人が隣で寝ていた何て……――――そんなのテレビだけの世界だと思っていた。
自分は決してそんな失態を起す人間では無いと過信さえしている。ううん、きっとこの先だってある筈も無い。

だとすれば、人生において最初で最後の大失態を今雅に経験している事になる。


きっと、20歳そこらなら悲鳴の一つでも上げてる所だけれど20代後半ともなると嫌でも冷静に寄っていく自分が居た。
恐る恐る、と今度は自分を確認すべく二の腕を持ち上げると矢張りそこも肌色。
確か服は袖がしっかりあるタイプなのだから私も何も着て無い可能性が高くなってきた。意を決してシーツをぴらり、と上に持ち上げる様にして両手で摘んで全身を確認する。すると見事な迄に下着すら履いていなかった……――――。


「…………」


ただ、絶句するしか無い。こんな時言葉で如何表現したら良いかなんて解らない。
そんな追い打ちを掛ける様にして突然寝がりを打った男性が此方を向く。
すると、ぴったりと閉じてた睫毛が2、3回震えたかと思えば「ん…」と鼻にかかった甘ったるい声がひそかに漏れた。
まるで夢の終わりを告げられたのか薄らと瞼を開けては、寝惚けた眼差しで私をぼんやりと映している。

陽に透けた瞳の色が力強さを宿す様に鮮明に浮かびながらも、それを縁取る目の形は目尻に向って下がり少し細めただけで優しげな雰囲気を醸していた。
眉も鼻も、そして唇の形さえ何もかも美形に整っている。少しだけ体を持ち上げた事でシーツが肌蹴ると均等に整えられた体の綺麗な筋肉がより見えた。欠点を探した所で見つからないとはこの事だ。雅に精悍な顔立ちと言うのは彼自身に良く当て嵌る。

その表情から滲み出る色気は女の私でさえ見惚れてしまう程だった。

そうして惚けた様に見ていると、やがて唇の赤い皮膚が艶めかしく、ツ、と上下に捲れると静かに吐息を零した彼はポツリと呟く様に声を発した。


「……おはよう」


陽に似た優しさを含む声だけが響くと驚きで動けずに居た自分は、まるで氷が溶けていくかの様に口の一部だけが漸く動く。


「……お、おはよう……ございます……」


テンパり過ぎて思わず日本語で話してしまいながらも、ひくひく、と引き攣ってた私の頬を見た彼は一瞬の瞬く双眸を見せると途端に小さく微笑む。
その垣間見せた、はにかむ様な微笑みだけでも魅了される女性が沢山居そうだ。そう勝手に思っていると彼は興味気な眼差しでじっと見詰めてくる。


「日本の敬語ってやつだね。随分と他人行儀な挨拶だけど」

「あ、当たり前です…。初対面に近い私と貴方に親しい関係は無いんですから」

「"親しい関係"ね…」


自分の発言に、しまったと息を呑んだ。きっと同じ気持ちを彼も抱いているに違い無い。
"親しい関係"……――――顔は初対面に近いのに、体は一線を越えてしまった結び付き。それを親しい関係と意味づけられると不可解極まり無かった。


「あ、あの本当に私達……し、し……」


(したんですか?)


上擦って言葉が喉に引っ掛かると、なかなか出てこない代わりに彼がサラリと代弁した。


「……俺と寝たかってことを確認したいなら、自分の体に聞いてみた方が正確に解るよ…」

「…………」


再び絶句したのは、自分の下腹部に妙な違和感があり太腿を少し動かせばツキンとする痛みを感じたからだ。
思わず片目を瞑ってしまうと、彼は途端次の言葉を慎重に探してるのか顎を人差し指で撫でると眉根を寄せて心配気に見る。


「ごめん……痛そうだったけど止められるものでも無かった。なるべく優しくしたつもりだったんだけど…」


口さえ、あんぐりと開けてしまうと頭が真っ白になってそれ以上何も言えなくなった。
正直、この年齢で初体験何て…――――結婚相手とばかりするものだと思ってた私は突然の晴天の霹靂に、ただ固まるしか無かったのである。



***



ザアー…とシャワーの音が聞こえる最中、今だシーツ一枚でいた私はぐしゃぐしゃな髪の毛を垂らして頭を抱えていた。
此処が漸く何処かのホテルだと気付いたのは先程ベットの縁から立ち上がった彼が肩越しで、行き先を告げた後の事だった。


「どうして…こんなことに…」


泥酔した女を連れ帰り体の関係を迫ってきた、なら全ての責任を彼に押し付けて帰りたい所だけれど、時間と共に段々と蘇ってくる真実がある。

そう、簡単に言えば……――――私が彼を誘ってしまったのだ。


段々とうやむやだった記憶が繋がってくると必死に昨日を思い出した。それは長年片想いしてた彼が昨日結婚すると社内に報告したのが全ての原因。
仕事が終り真っ先に行きつけのバーに駆け込めば、カウンターの隅で座り涙を零してヤケ酒を呷った。
こんなのは人生初めてで加減も解らずにお酒を浴びる様に飲んでしまった所に、彼が隣に座る。所までは、まあ、良かったのだが……――――。

その夜は自分であって自分じゃ無かった。長年押し込める様な片想いの反動から、硬い殻を兎に角破ってしまいたくて堪らなかった。

私は立ち上がった彼の腕を掴み、無理やり引き寄せては唇を奪った。それもことある事に何度も、何度も……――――。
ホテルに辿り着いた頃には、積極的に自分から服を脱ぎ始め…。

駄目だ。これ以上は口にするのも恐ろしい。

けれど夢中になってても、所々覚えているのだ。
お酒の勢いでしてしまった行為だとしても彼は労わりながら優しく抱いてくれたことを。

私の肌を撫でる手の温度や唇の柔らかさが滑る様に体を巡った場面が鮮明に浮かぶと、襲い狂う羞恥に耐えるしか無い。

この羞恥は何処にぶつければ治まるのだろう。

責任云々の問題じゃ無く、もっと根本的に解決するのはこの出来事を一刻も過去にして忘れることだけだった。


今だシャワーの音がバスルームから聞こえる。顔を見ずに此処から消えるのは今しか無い。
私はベットから飛び上がると急いで服に着替え逃げる様にそこから立ち去った……――――。

どうやって家に帰って来たのか何て覚えて無い。無意識に近い足を動かして兎に角必死に歩き続けた。



***



人間ってものは単純だと聞くけれど、敢えて単純に見せてる時もあるんじゃないだろうか。
表面的な感情は内面に隠して私は無心になって仕事をこなす。あんな出来事があってもこんな風に何かに没頭すれば記憶というもは段々と薄れていくんだろう。と、実感した矢先の事だった。

くたびれて一人暮らしの部屋に帰ると完全オフモードになった私は……――――早速ラフな格好に着替える。
ソファーに深く腰を下ろしてから、缶ビールを片手にポップコーンを頬張りながらテレビの電源を入れた。何かのバラエティ番組が途端にパッと映る。

ぐび、と一口飲んだ所で頬に含んでた苦味のあるビールを次に喉に流し込もうとした瞬間。


『今日のゲストは、NY1セクシーな男と言われるフレデリック・カーターさんです』

「…ぶはっ!」


喉に向かう筈だった黄色い炭酸は、逆側に勢い良く吹き飛んだ。慌てて立ち上がり、自分の服や床に無残に飛び散ってしまったビールを一瞥するだけで再びテレビの中で映っている人物を凝視してしまった。


……――――見間違う筈も無い。晴天の霹靂。驚き声を失うのは、あの夜を共にした彼がそこに居たからだ。



***



夜の同じ時間、例のバーカウンター席に座るフレッドの後ろ姿がある。
フレッドの隣には常に着飾った女が寄り付く様に隣に座るが、彼自身立ち上がる素振りも無く酒を飲み続けていた。


「さっきから何を見ているの?」


自分の方へ興味を引こうと業とらしい猫撫で声を作る女に向っては、口許だけで曖昧な微笑みを浮かべる。
お気に入りの酒を前に置いて、フレッドは頬杖をしながらも反対の手では白い紙を人差し指と中指で挟むと流し目で観察していた。


「……赤ずきんの名刺、かな」

「あか…ずきん?」

「日本の童話だよ…」


言いながら、ス、軽く持ち上げると自分の唇に寄せては一度目を伏せるフレッド。
それから、ゆっくり持ち上げた瞼から覗かせるのは何かを定めたかの様な瞳の鋭さだった。


「――――……狼に狙われる可哀想な物語なんだ」


END

Presented by HINANA
Thanks for reading to the end.



GGフレッドBD2016の献上品。大人同士のビターな出逢いの話。
タイトルのLady Killerはカクテルの名前です。
見た目が穏やかで、すっきりとして優しい味わいにも関わらず、実際のアルコール度数が高くてあっという間に酔いが回ってしまうようなカクテル。これを女性に飲ませて酔わせる目的に使われることから、この総称があるそうです(引用)
ページトップ