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優しい雨は本音を隠す……最終話
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アイザック・シュナイザー//関係:片想い//傾向:甘くて切ない//時代:高校生 【視点:ヒロイン】




熱に魘された夢の中でママを見付けた。広大な色鮮やかな草原中央に佇み笑顔で手招きする。
けれど走っても走っても一向に距離が縮まらずママは背中を向けると歩いて行ってしまった。
野原を歩いてた筈なのに一歩踏み出せば切りたった崖から真っ逆さまに落ちてしまう。
叫ぼうとも声は出ず服や髪を激しく揺らして必死に手を伸ばした先には、崖の上から覗いてたママの悲しい顔だった。


『行…かないで…何処にも行かないでよ……――――ママ』


どんどん遠ざかる顔がやがて消えた時に、どぼんと黒く深い泉に落ちた。ごぼごぼと口から気泡を吐けば息苦しさにもがいて手を必死に伸ばす。すると何かを掴んだ感触があれば手繰り寄せては何とか浮上しようと上へ上へと足をバタつかせて泳いだ。


『…安心しろ』


水の膜によって振動する様な声が何度も何度も聞こえ始める。
途端に泉の色が渦巻く黒から澄んだ水色に変化していくのは上から陽がカーテンみたく燦々と降り注ぎ始めた所為だ。
ざぱ、と水面から顔を漸く出せた時に、誰かのはっきりとした声が耳に届いた。


「俺が日七の傍に居る…」


初めて聞く何処までも優しさに溢れている声。
けれど、アイザックは私の手を取って願いを込める様に祈りながら自分の額に寄せていた。
ただ伏せた瞼の中で揺れる瞳は、まるで迷子の子供のみたく何処かを彷徨う様に見える。

そんな顔しないで。


「居るよ…」

「…私も居るよ」


「…私もずっと、アイザックの傍に居るよ」


大丈夫だから。何処にも行かないと小さく頷き見せてあげると、アイザックは驚いた様に瞼を開けた。
その時、少しだけ解った気がしたんだ。近付けない壁の隙間には、ほんの少しだけ隠された哀しみがあったことを。
私も、両親が離婚した時に部屋で一人で泣いてた時に鏡に映る自分の瞳を何度も見てきた。

今のアイザック、あの時の私と同じ瞳をしていた…――――。


昔の自分を記憶の箱に閉じ込める様に、再び瞼をゆっくりと閉じると眠ってしまった私は朝方近くに、もう一度意識を覚ました。
すると、頬や首筋にふわりとする質感を感じる。何だろう、と気怠い頭を動かすと白い熊のぬいぐるみが横に寝転んでいた。


「…………」


声が出せなかったのは、ぬいぐるみを挟んでアイザックがそこに、すやすやと眠っていたからだ。
何時の間にか私の手はぬいぐるみの手と繋がれており、その反対側の手もまた同様にアイザックが握っていた。
私と、くま、そしてアイザックが手と手を繋いでいて、まるで見えない糸で繋がる一つの線にも見える。
手の皮膚に毛並みの柔らかさが心地良く伝わり、不思議と心の水面が静けさを打った様に落ち着いてきた。
それがまた急激に膨らむ睡魔に覆い包まれると、自然と重くなった瞼を抗う事無く閉じる…――――。



***



「昨日は誕生日だったのに…最悪だ」

朝になり、シーツから徐に頭を出す私は胸の奥から鉛の様な溜息を零した。
数回重たそうに瞬きを繰り返すとぼんやりした輪郭だった部屋がハッキリと見えてくる。


「それはこっちの台詞だ…」

「!」

ガバッと勢い良く起きてしまえば、アイザックがベットの縁に腰を下ろして両腕を組んでは呆れた顔で見詰めていた。
既に部屋着から着替えてるのか、シャツとジーンズ姿のアイザックは眉を潜ませる。表情からは何言ってんだ、コイツとそんな風に聞こえてきそうだ。いや、問題はそこじゃ無い。


「私…何で此処に。えっと…あれ?」

「…………」


あの雨の日アイザックの胸に凭れてしまった所までは記憶がハッキリしてたけれど、その後は途切れ途切れしか覚えていなかった。それでもアイザックが心配そうに覗き込んだり、何度も、何度も額に冷たいタオルを置いてくれたのは記憶がある。


「有難うございます…」


アイザックが看病してくれたのだと解ると素直にお礼をする。体育座りの状態で頭を下げると、両膝に額がくっ付いた。
持ち上げた頭を起すと途端にペチ、と音が聞こえたのはアイザックが伸ばした片手で額を触ったからだ。


「叩かなくてもいいのに」

「熱を測ってるだけだ。……――――もう、殆ど無いな」

「ほんとだ。体が昨日より全然軽い」


そこで、ハッとしたのは【昨日】という単語を聞いたからだ。
日付は変わってしまっても、昨日はアイザックの誕生日だった。私はクラブで親しげに見えた例の美女が浮かぶ。


「あの人は…?」

「…誰だ」

「アイザックと一緒に居た、あの仲良さ気だった綺麗な女の人…」


何故蒸し返したのか解らない。けれど考えてた事がその儘口から出てしまい、慌てて口を引き結んでも遅かった。
然し対して、ああ…とだけ生返事をするのは然程気にも留めて無い様に見えるアイザックは視線を斜めにした後…――――何故かベットに乗ってきた。

四つん這いで、ゆっくりと。ベットに両手足を乗せては動く度にギシ、と鳴るスプリングの音。


「確かに…目が覚めたら今頃何処かのホテルで俺の隣には、その女が居たのかもな」


ズキリ、と胸の痛みを覚えたが此方に近付く気配も、またそれ以上に動揺しだす。
何となく枕の端まで座りながら後ろへ逃げてみたけれどベットの柵が背中にぶつかってしまった。


「わ、私の所為…」

「そうだな…お前の所為だ、だったら責任の取り方くらい解るだろ?」


ガッ、と業とらしく柵を両手で掴んだアイザックは、両腕に私を挟む形で膝を立てて座った。
影さえ全てを覆われて逃げる場所さえ見出せない私はただ蹲って固まる事しか出来ない。そんな私を嬲る様にアイザックは悪戯な瞳だけを向けた。


「…解んない」

「解らないなら、教えてやる」


間髪入れずに言葉さえ塞がれてしまう。駄目だ、逃げ道が見付からない。
だったら、もう苦しい嘘だけが唯一の救いだった。


「教えて貰わなくても何となく解る、私だって…それなりに経験してる、から」

「…………」


ぎゅ、とアイザックの手に力が入るのが解る。
それ所か先程の悪戯な瞳は影をすっかりと潜ませ代わりに浮き彫りにされたのは何処までも真剣な顔。
それも何故か酷く不機嫌そうにも見える。それでいて私の瞳を探ろうとしてるのか、じっと見下ろしていた。


(あれ、思いの外結構効いてる?)


然し後悔したのは言う迄も無い。
アイザックは値踏みする様に足の先から頭の上まで舐める視線で見ると、あからさまな微笑を浮かべた。


「へえ…」

「何…」

「いや…別に」


お前に経験何てあるのか、と何時もみたいに馬鹿にされるだろうと簡単に予想出来る。
だったら今の内にボロが出ない為に顔を叛けてみるが、それは適わなかった。
ス、と伸ばされたアイザックの手は私の頬に少しだけ触れた。すると親指だけで滑らした後には、顎のラインを擽る様になぞる。
ふわりと羽みたいに触れる優しい手付きが、妙に浮遊感を感じたのは紛れも無いアイザックの瞳から漂う穏やかな空気を感じた所為だ。


「…………」

「…………」


頬に集まる熱を感じるけど、アイザックの綺麗な瞳に吸い寄せられてしまえば視線さえ外せなくなった。
まるで見え無い糸か何かで繋がれてしまった様に動けない……――――。
そんな私を見下ろしてたアイザックは一度僅かばかりの眉に皺を寄せ困った様に視線を斜めにする。
けれど呼吸を挟んだ時には擽ってた親指を耳の下に置かれると首筋に手を添えた。そして、アイザックは顔を傾けながら近付く。
戸惑いの欠片さえ見せない唇の動きは薄く開くと、真っ直ぐ私の唇に届きそうに…――――。

思わず瞼をぎゅっと瞑る。すると頭の上にバサリと白いバスタオルが掛かった。


「え…?」

「…汗掻いてんだから、シャワーでも浴びて来い」


バスタオルの上から瞼を開けると白い景色だけになる。
続いてベットのスプリングが鳴ったかと思えば、部屋を歩く音が聞こえ、段々遠ざかった。

……――――キイ、パタン。


アイザックが部屋から出て行ったらしい。ポツン、と一人残された私は一体何が起きたのか解らない。
けれど途端に静かになる部屋なのに、胸の奥で鳴り響く早鐘だけが私の耳に何時までも届いていた。



***



アイザックのお言葉に甘えシャワーを浴びると、寝汗で濡れた肌が本当にさっぱりとした。
なので先程の出来事はシャワーの湯と共に流してしまおうと思った。アイザックには、どれだけからかわれたか解らない。
今回のだってきっとそうに違い無い。渦を巻いて排水溝へと流れていく水を見ながら必死にそう思った。
シャワーから浴びて出ようと扉を開ければ、洗面台付近に私の服が見える。洗濯され乾燥機で乾かしてくれたのだろうか、きちんと丁寧に畳まれてあった。

慌てて袖を通して着替えると、私も見習ってバスタオルを畳んでバスケットに置く。
そしてリビングへ歩いて来てはアイザックの姿を探した。トントン、と何かを切る音が聞こえればキッチンへと顔を覗かせる。

アイザックは袖を捲ってフライパンを持てば何かを焼こうとしていた。脇には白い卵子がころり、と転がっている。
卵と手元を交互に見れば、慌てる様にして隣へ立つとフライパンを奪う勢いで腕を使ってアイザックの体を押してしまう。


「それ、目玉焼き?待って!私が手伝う。やらせて?」

「…ああ」


矢継ぎ早の勢いに負けてくれたのか、あっさりと引いてくれたアイザックは隣へ顔だけ向けた。
お世話になりっぱなしじゃ気が済まなかった私は意気込みを新たに目玉焼きに挑戦したのである。


ジュー……――――。

そして数分後。二つの目玉焼きは見事なまでに焼け焦げた。


「真面に目玉焼きも焼けない奴が居るとはな…」

「ち、違う…。此処は私のキッチンとは違うから…」

「失敗する奴は、どいつもこいつもそんな言い訳をする」


アイザックは怒る所か、それを餌にするかの様に楽しそうにからかってくる。
火加減を言い訳にしても、やる気が空回りした私は肩を落しながら皿に乗せていた。
唇を軽く尖らせてしまうその横では、手慣れた様子でアイザックが料理を仕上げている。
続々と出来る手際の良さに感心めいた視線を送っていたが。不図手が止まったアイザックは眇めた眼を向ける。


「見てないで手を動かせ」

「は、はい!」


アイザックの厳しい指導の元料理が全て完成すれば、ダイニングテーブルへと運ぶ。
料理上手。そんな風に新しい一面を発見した事を密かに喜んだ私は、早速食べると一口がどれも美味しかった。

美味しいのに、味気無いと思ったのは料理の所為じゃ無い。
矢張りと見渡すのはアイザック以外の家族の人の気配がなかったからだ。
リビングだけでは無く、家そのものは広くても何処か無機質に感じる。
高校生なのに、一人で住んでるのだろうか…――――ううん、きっと共働きで夜勤があるお仕事をされてるとか。

「アイザックは……いつも独りで食べてるの?」

しまった。思えど詮索する聞き方をしてしまうもアイザックは気に留めずサラダを口にした。

「そうだな、家では独りで食べる。親父は滅多に帰って来ないし…」

その続きを待っても母親の名を口にしないアイザックは静かに目を伏せていた。私は、そうなんだ、とだけ返事をする。
黙って見てしまうと、アイザックは突然持ち上げた瞼で此方を見る。すると自然と目と目が合った。

「わ……たしね、両親が離婚して。母親は日本に居るの…でも再婚するから私は居ずらくなっちゃって、こっちへ来たんだ」

聞かれても居ないのに身の内話をしてしまった私は、あの、と口籠った。けれど素直に言わなければいけないのは心得ている。
アイザックはフォークを皿に置いては黙って聞いてくれていた。

「だから、本当にアイザックが面倒見てくれて助かったの。本当に、本当に有難う…」

丁寧に頭を下げると、肩から髪の毛が数本ぱらりと落ちた。


「…雨」

「え…」


顔を上げればアイザックはふ、と目許を緩めて僅かに微笑んだ。そして窓の方へと視線を向ける。
すると何時になく優しげな眼差しと共に耳に心地良く届いた、アイザックの言葉。


「…止んで良かったな」

「うん…」


食べ終わると、アイザックは窓際に佇み遠くの方を眺めていた。陽に透けては、髪の色が暖かそうに見える。
何を見ているのか近くに寄って聞けば、家族とだけ答えた。下の道路を歩いてる仲睦まじい家族を二人で一緒に見ていると、私は口が勝手に動いていた。


「何時か…出来るんだね」

「何がだ?」

「自分達の…新しい家族だよ」

「…………」


アイザックは黙って私を見詰めた。例え両親が離婚してしまったとしても、寂しさを乗り越えた先には何が見えたのか。
それは、何時か好きな人と結ばれ結婚した後に出来る新しい家族。そこはきっと何よりも温かな場所だと信じていた。


「自分達…とは…――――俺とお前が結婚するって意味か?」

「ええっ!?」


そうか、独りで食べてるって聞いたから何時かアイザックにもと思ってたのは間違い無いけれど、そんな風に捉えられるとは想像もしなかった私は酷く狼狽えた。そんな様子を口許を緩めて面白そうに眺めてるアイザック。


「ち、違うよ!私がアイザックと結婚なんてするわけ…ないでしょ…」

「そうだな…。俺だって目玉焼き一つ焼けない女の世話何てごめんだ」


もう下にいる家族を二人で見る事無く、私達はそれぞれ別の方向へ視線を投げた。
ああ。きっとマークが居たら何時もみたいに言うんだろうな。仲良くしなよって。



***



そして、アイザックの誕生日から随分と月日が経った頃。
相変わらず私達は逢えば口を言い合う仲なのに、一つだけ変わった事があった…――――。
今日も授業が終り、帰ろうと校舎から出た所で見上げた空から雨が降っていた。

すると、先の門の所で見慣れた傘を開いて立って居るアイザックが居た。
行き合う車を見ているものの制服姿で傘を差しその場から動こうとしないものだから、物珍しさなのか、憧れの対象なのか幾人も携帯で写真を撮ってる女子生徒が見える。

そんな人の狭間から突っ立て居る私を不図見付けたアイザックは瞼を一瞬瞬かせた後、漸く歩き出せば女子生徒には目もくれずに通り過ぎた。そして、足取りゆっくりと此方に歩いて来ると私の目の前で、その足は止まる。


「遅い…」

「ごめんなさい…。って、別に毎回待ち合わせしてないでしょ」

「…さっさと行くぞ」

「無視しないで」


ずい、と傘を持つ腕が伸びると首を僅かに傾けたアイザックは、早く入れと目で催促してきた。
そうだ。変わった事は雨の日になるとこうして一緒に帰る様になった事だった…――――。
最初は偶然だと思っていた。けれど次の雨も、そのまた次の雨もアイザックは傘を差して待って居た。
そう偶然が重なっても、アイザックが居ない時もあった。私は帰ろうと足を動かしても、まるで足元に見えない線引きがある様に自然と踏み止まってしまう。

私が待っていると、アイザックは傘を差しながらも気付かず歩いて行こうとするもんだから走っては無理やり傘に入ってみた。
すると、隣でアイザックが息を呑んだ様に驚いた顔をしていて。「もう、帰ったとばかり思った」そう呟き一つ落とせば、斜め下に視線を向けた。

そうして何時の間にか、待ち合わせても居ないのに雨が私達を引き合わせてくれる。
私が誕生日に贈ったプレゼントの傘で…――――。

今日も一つの傘で二人で入ると少し窮屈だ。けれど、あまり濡れないのはアイザックが私の方へ斜めに傘を差す所為でもある。
二人で他愛も無い会話をする途中、何度も、何度もアイザックの持つ手を押して真っ直ぐにするのは身に着いてしまった私の癖。


「……で。今日は一体どんなくだらない話をするんだ?」

「くだら無いとか言って、会話しないと拗ねる癖に」

「誰が拗ねるか…まあ、いい」

「そうだな…今からすれ違う人で、将来自分が結婚しそうな人を予想し合うってのはどう?」

「…は?」

「色んな事も話してきたし、偶には人間観察でもしてみようよ」

「本当に、くだらない話だったな…」


そう物言いされても私が勝手に始めてしまえば、嫌な顔をしながらもアイザックは毎回付き合ってくれる。
すると早速通り過ぎた長身の男性に視線を向けると、素早く特徴を見ながら感想を述べ始めた。


「今の人は優しそうだった。結婚したら犬とか飼いそうな」

「案外女には厳しそうだが…。勝気なお前とは合いそうも無いな」


うん、と笑顔を作ると未来を想像するふりをして大きく頷くも、アイザックは目許を細め首を傾げる。
然し何人挙げようとも今の所アイザックが認めた人は誰も居なかった。


「じゃあ、向うから歩いて来る人、なかなかハンサムだしね…」

「あれは相当女と遊んでるんじゃないのか。表面には見せず何人も女を泣かせるタイプだろう」


(アイザックが言うんだ……いや、それよりも)


「ちょっと…さっきから何で1人も褒めたりしないわけ?」


思わず足を止めると早々抗議の声を上げた。つられる様にしてアイザックも足を止める。
私が幾ら探しても頭から否定を決めつける物言いに対して流石にム、とした。


「これじゃあ、私と結婚する人が1人も居ないみたいじゃない」

「だから居ないんだろ」

「酷い、どうしてよ」


「1人も、じゃなくて……――――1人しか居ないからだろ…」

「…解んない」

「解らないなら、教えてやる…」


心臓がドク、と音を立てたのは、きっとアイザックが真剣な表情で見詰めていたからだ。
茶化す雰囲気さえ見せず、あの時みたいに頬に集まる熱を感じるけど、アイザックの綺麗な瞳に吸い寄せられてしまえば視線さえ外せなくなった。
矢張り見え無い糸か何かで繋がれてしまった様に動けないのは何故だろう。

すると、再現する様に親指を耳の下に置かれると首筋に手を添えた。そして、アイザックは顔を傾けながら近付く。
戸惑う欠片が雨に混じって見え隠れた瞬間、唇の動きは薄く開くと、真っ直ぐ私の唇に…

今度は届いてしまった…――――。

柔らかなアイザックの唇が食む様に上唇を甘く吸うと、ふっくらとする下唇が微かに動いた瞬間には吐息さえ挟む事を許さない程深く重ねられた。

想い焦がれた温もりは想像以上に熱くて、雨が傘にポツポツとあたる音が心臓の音と一緒に耳に入る。
少しだけでも動こうとする私の腰をアイザックが逃がさない様にしっかりと片腕で抱き締めていた。
重なり合ったのは唇だけでは無く、隙間無く体さえも一つに見え、全身から伝わる体温や眩暈がしそうな程の甘い匂いがする。

驚きのあまりに瞼さえ閉じるのを忘れていると、顎だけ引いたアイザックが名残惜しそうに唇を僅かに離した。


「いい加減…解れよ」


低い呟く声が唇から零れると、アイザックは伏せた瞼をゆっくりと開けては切なそうな瞳の中心に私を映す。
私は眉に皺を寄せ泣きそうになった。恥ずかしいだけじゃない…アイザックの瞳には私しか映って無くて。


私を、ちゃんと見てくれていて…――――私だけを、ちゃんと好きになってくれたのかな……。


あの日の様に、じわ、と込み上げる感情が心を突き抜けてしまえば勝手に目尻に涙が溜まると私は無理やり微笑んで見せた。
アイザックは矢張り親指で涙を拭ってくれると、その手で私の腕を掴めば引く様にして自分の胸元に引き寄せる。

サア―――……と静かに降る雨の音を体温を分かち合う様にして二人で聞いていた。

その時不図私の横を擦り抜けたアイザックの背中を思い出し、思わず手で腕の服を掴んでしまった。
こうして、ずっと捕まえたかった。けれど、そんな本音を傘で隠す様にして黙ってるとアイザックは目を閉じる。


日七…。俺は、お前が…好きだ」


すると口許を緩めたかと思えば、くす、と優しく微笑んだ。


END

Presented by HINANA
Thanks for reading to the end.



魂を込めて書き尽くした…┗┐┗┐バタッ(そして灰になった)
アイザックを書くのは本当に難しい。超高難度の執筆でした。
色んな伏線を張ってたので、それを少しずつ回収しながら繋げいった。
何故BDを一つの作品にしたのかは、言わば挑戦。
公式が分割にするBDシナリオを、此方はちゃんとプレゼントという軸をしっかり決めてから、一つの作品で動かしたら面白いかもと思った。結構今回は幼少時代もあったのでBDならではだなと思いつつ、自分なりに深く掘り下げてみたけど、掘り下げ過ぎて本編並のディープさになってしまった。(遠い目)然し後悔は全くして無い。寧ろIパパはこうあるべきだと思ってる。

ツイでも乗せたが、私なりのアイザック分析。
言い方の問題とドS、と見せかけるのは鬱陶しい女払いで身についただけであって内面は非常に真面目で紳士であり素直な部分も多い。洞察力が人一倍優れているのは常に顔色を見ていた幼少の複雑な家庭環境に影響。色んな過程で抱えたトラウマによって人を信用出来ず信頼もしてなかった。

アイザックは、面倒見が良くて気が利いてて凄く優しい。本来は。その点を大事にして書いてました。
誕生日も過ぎてしまったけど魂はめちゃくちゃ込めたので、快く献上致します。

何時かこの二人でまた書きたいと思います。(深々お辞儀)
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