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優しい雨は本音を隠す……第6話
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アイザック・シュナイザー//関係:片想い//傾向:甘くて切ない//時代:高校生 【視点:アイザック】





今まで与えられた環境だけで生きることを許されない幼少において、目線が高くなる度に視野や行動範囲もずっと広くなる。
まるで鳥籠の中にしか住めない小鳥は、時間を餌にして大きくなれば自分は飛べるのだと知る。
だとしたら扉が開く瞬間だけを待ち詫び何時か大空へと羽ばたける瞬間を夢見てしまうものだ。

俺も同じ、小鳥の羽を引っ付けた様な年齢だった頃には、もう自由になりたかった。
窮屈な環境から、親父から、自分を取り巻く全てのものから早く飛び出したかった。

平穏なんてものは、まやかしだ。綺麗な場所に憧れも無ければ囲まれたくも無い。

寧ろ歩いた先に見えた場所には私利私欲に塗れた夜の世界だった。
大人にならなくたって酒や女は勿論、華やかなものを俺に教えてくれる。
そうやって気付けば、何時の間にかその黒さに慣れてしまった。その方がずっと居心地が良い事に気付いたからだ…――。



***



まだ夜の黒さすら知り得なかった小さい頃…――――。

赤い風船が雲一つ無い澄み晴れた水色の空に一つだけ浮かんでいる。
遊園地の観覧車より遙か上まで飛んだ風船を俺は瞬きしながら見上げていた。


「アイザック!」

「ママ…」

「もう、何処へ行ったのかと思った」


走って来たママが肩で息をしながら安堵の息を漏らすと俺を体ごと強く抱き締める。
身長差が随分ある腕の中で「ごめんなさい」と素直に謝るとママは優しく頭を撫でてくれた。
その時腕の隙間から見えたパパが慌てる素振りも無く歩いて来る。俺は怒られることを覚悟した。


「見つかったのか」

「ええ…風船を見てたみたい」


ぎゅ、と瞑った瞼だったけどパパの怒った声は幾ら待っても降ってこない。
それ所かパパは俺達の横を歩いたかと思えば背を向けて歩き始めてしまった。


「もう叱れもしない不器用なんだから。……全く、心配してたなら声くらいかけてもいいのに」


抱き留められてる儘に、俺は顔だけで見上げるとママは眉を寄せては困った様に笑っていた。
それでもパパを見詰めながら目尻が下がって幸せそうな笑顔を浮かべるママが、俺は――――好きだった。

そんな穏やかな日常が、ある日一変した。

その日、カイルが勝手に遊び始めた隠れんぼ、とやらに付き合う羽目になった。
俺はヴァイオリンの稽古があったし散々断ったというのにカイルは頑固として聞かなかった。
揃いのくまのぬるいぐみを買い与えられた時から強情な性格が更に強くなった印象がある。
一度だけ付き合えば満足するだろうと思い、仕方が無いが俺はパパとママの寝室のクローゼットに隠れた。
やがてカイルが色んな扉を開け閉めしたり、物を動かす音が聞こえ始める。
こんな隠れやすそうな場所直ぐに見付かる筈だ。馬鹿馬鹿しく思いながらもカイルが来るのをひたすら待つ。
然し玄関の扉が開いたかと思えば、カイルは走って来ては真っ直ぐに俺の居る場所へと辿り着くとクローゼットの扉を勢い良く開閉した。


「!」

「やっぱり此処に隠れてたんだ」


歯を見せて笑うカイルが両手を広げる様にして俺を見る。最初から気付いていた、そんな言い方だった。
見付かったのなら遊びは終わりだと此処から出ようとする俺の肩をカイルは何故か押しては奥へと追いやった。


「お前…」

「しー!来たから!」


二人の足音が聞こえると、カイルは慌ててクローゼットの扉をぱたん、と閉めてしまった。
大きなクローゼットの為か子供の俺達が窮屈する思いは全く無い。
上から垂れた服や足元の紙袋さえ気を付けてれば変な音は出ない筈だ。
けれど板と板の隙間から漏れるだけの光だけがある薄暗い中に居るのは何だか落ち着かなかった。
カイルは何故か俺の方腕に両腕を回して体を押し付ける様に寄せては必死に引っ付いてくる。

暑苦しい、と眇めた眼を向けてもパパが余程怖いのだろうが俺には関係無い。
然も俺達が居なければ探しに来るのは当然だろうに。

そんな最中大人しくしていると、扉がバンと勢い良く開いた。
すると雪崩る様にしてパパとママが入って来ると身振り手振りを加えて激しく口論を始める。
声の大きさにビクッとカイルが強張るのが解ったが俺は眉を寄せ見開いた眼で、ただ見てるだけだった。

――――…見ていることしか出来なかった。

夜になっても、なかなか寝付け無いでいると急に扉が開いた。
漏れる光に刳り抜かれた様な人の黒い形が縦に伸びた頃、俺は瞼を閉じて寝たフリをする。
近付く足音に息を詰めて待ってると、突然ふわりと頭を触れられた。
大人しくしていると、温もりが離れていく。遠ざかる足音はやがてパタン、と扉が閉まると俺はハッと瞼を開けた。

「………」

そこに残る温もりが、まるで意思を持ったみたいに何時までもいた。
頭を覆い隠してしまう程大きくて力強い、それは不器用な触れ方だった。

「……パパ」

朝起きて当たり前に昇る太陽が違う色に見えた。
何も理解してなかった昨日と知ってしまった今日とでは何かが違って見える。
パパが新聞を読んでる姿や、ママが冷蔵庫を開ける背中さえ見え方が変わってしまった様な錯覚を覚えた。

まるで二人の間に隔てられた壁があって互いにそれを意識してるような、息苦しい重圧的な雰囲気が部屋に立ち昇っていた。

間違えであって欲しいと願った所で日々を重ねていけば、それは悪い方向に向かってると嫌でも気付いた。
あからさまにパパを避けてるママを見れば、深い溝が二人の仲を裂く様にして距離を開けている。
そして今は同じ空間に二人で居ることの方が珍しくなっていた。
理由は解っている……―――――けれど徹底して気付かないフリをした。


「もう直ぐヴァイオリンの演奏発表会ね……」

カレンダーを見ながら何処か懐かしい物でも眺めてる様な声でママは言った。

(ママは来てくれる?)

その言葉を飲み込む為に朝食のフレークを口の中に入れては噛み砕く。
噛んで、噛んで、全て無くなってしまえばいいと思いながら無言で首を縦に振った。
相変わらず仲の悪い二人を見ていると、最近俺はそれを打破しようと必死になり始めていた。
夜遅くまで指が痛くなる程、発表会に向けて猛練習をする。
カイルが遊びたそうに引っ付いてきたが一切無視をすると、漸く諦めたのか最近は大人しく見ている事が多い。

何かが変わったとするならば、もう一つ。
夜ベットに寝ていると毎日頭を撫でにくるパパが居た。
勿論喋りはしないし、ただ触れるだけだ。時間にしては数秒かも知れない。
けれどそれはどんなに遅くても、パパは俺の部屋へやって来ては頭を触って帰って行く。
俺を起こさない為か静かに扉が閉まる音を合図に瞑ってた瞼を開けた。


朝になって学校へ行く為に玄関に居ると、名で呼び止められ叱りながらママが急いで歩いて来る。


「アイザック!学校に行くなら、行くってきちんと言いなさい!」


俺は振り返り眉根を下げると「ごめんなさい」と素直に謝った。そんな態度を見ればママは吊り上げた目を元に戻した。


「挨拶は大事なのよ。見送りや出迎えはその人の顔を見ると見ないとじゃ一日が違うんだから」

「行ってらっしゃい…アイザック」

「行ってきます」

「気をつけて帰って来るのよ」

「はい」


背を向けて玄関のノブを動かしては少しだけ開けると一度肩越しで振り向く。そこに居る筈のママの顔をきちんと確認した。
すると目と目が合った瞬間見えたのは、優しくて温かな笑顔を浮かべる何時ものママだった。
けれど見え隠れる悲しい感情を隠す為に、いっそう柔らかな微笑みを浮かべたママは扉が閉まる迄手をずっと振っていた。

パタン……――――。



***



発表会のヴァイオリンの演奏は完璧だった。弦を震わせて観客を魅了する為に一生懸命感情を込める。
聞き入ってる人の多さから時折瞼を開けて演奏しながら探すと、扉付近に一人だけ立って居る人が居た。

……――――ママだ。

その表情は周りの観客とは違って、楽しんで聴いてるというより何処か辛そうな表情で此方を見ている。
まるで、その眼に全てを焼きつけてる様な何か切羽詰まったものを感じた。
そして演奏が終わりに近づいた時に、何故かママは背中を向けてしまうと扉をゆっくりと開けて出て行く。
ハッとした俺は指の動きを間違い、最後の最後に絶望的なミスをした。その儘ヴァイオリンを下してしまうと、途端にザワザワとする観客達の声は遠くに聞こえ始める。

気付いたら慌てて走り出していた。ママを追う為に…――――。
会場から外へ抜けると、直ぐ肌にポツポツと冷たい何かが跳ねた。それは雨だ。
どんどん濡れていく髪や服が水分を含んで重たくなっても気にする素振りも無く顔を動かし必死で探した。


「……っ!」


全速力で走った所為で息はとっくに弾み、白い息が口から絶え間なく見える。
そんな時に向こう側の道路を歩くママの背中を見つけた。弾く様に足を向けた俺は降り頻る雨のカーテンを突っ切る様にして一生懸命走り続ける。


「ママ!!」


ママは傘を差しておらず俺の声に反応すれば、ビクンと全身が強張るのが解る。
然し足を止めたものの、此方を振り向いてはくれない。


「ママ…」

「…………」


その時クローゼットに居た時の会話が耳に蘇れば、今日が矢張り 『その時』 なのだと理解した。


『貴方の傍にはもう居たく無い。……私は、この家から出て行きます』


(ママ!何処に行くの!!)

 ……――――とは言わず言葉を必死に飲み込む。

後ろから見ても、鞄を持つ手が震えながら俯くママを見てしまえば泣いてるのだと解ったから。


「いってらっしゃ…い…」

「!」

「いってらっしゃい、ママ」


それはママが教えてくれた挨拶の言葉。

『挨拶は大事なのよ。見送りや出迎えはその人の顔を見ると見ないとじゃ一日が違うんだから』

次にママが返してくれる言葉は、きっと『ただいま』だから。そうしたら絶対に迎えにだって来てくれる。
俺の顔を見に必ずまた帰ってきてくれるよね。だからそれ迄俺は泣かないで居たい――――。
頬が引き攣ってても辛い時でも笑っていなきゃ駄目って昔ママが教えてくれた事だから。


けれど、本当は――――……。


横断歩道の信号の青が点滅しだすと、ママは必死な覚悟で振り切る様に走り出すと向こうへ渡ってしまった。
赤になると俺達を引き裂く様にして一斉に走り出す車の数々。
それを呆然と見続ける俺の眼は一点に注がれる。車の残像の先に段々小さくなるママの背中。
やがて再び信号が青に変わっても……――――もう、そこにママの姿は一切無かった。

ヴァイオリンの練習もした。勉強も頑張った。家の手伝いも沢山した。
お遣いも行ける様にもなった。掃除や料理だって出来る様にもなる。絶対困らせたりしない。


なのに、俺の一体何がいけなかった……――――ママ。


「アイザック!」


突然低い男の声が聞こえたかと思えば、振り向いたと同時に大きな覆う影に全身を包まれた。
次の瞬間頬に痛みが走ったのは、振り翳した手の甲で頬を叩かれたからだ。その反動で尻餅を着くも、直ぐに腕を取られ勢い良く引っ張られた。


「パパ……」

「黙って勝手に出て行くな!」


蹲ったパパの胸に力強く引き寄せれると逞しい腕で抱き締められる。
初めてこんなに強く叱られた。そして初めてこんなに強く抱き締められた。
大きな体で雨を凌いでくれる逞しさに、急に胸が痛みだす。

抱き締める逞しい腕は硬く、ママと違ってこんなにも大きいんだ、と初めて気付いた。
そしてパパは小さな声で俺の耳にだけ届く言葉を一言漏らす。


「………すまない…」


そっと頭を優しく撫でる手の温もりにある真意をそこで知った。
毎日触れに来たパパは何時かこうなる運命だと知っていたからだ…――――。



***



月日が経っても、三人で遊園地に行った思い出だけは色褪せなかった。
然しアイスクリームを渡す時のママの笑顔だけは灰色に変わっていく。それは手の指から零れていけば、地面に砕けていった。


信じる先に見えるのは決して幸福だけでは無い。そう随分と昔に俺は悟った。
目に見えない不確かな感情の裏側を癖の様に探ってしまうのは、きっとその頃からだ。
失ったものが不幸だと言う人も居れば、反対に残ったもの見比べては幸福だと言う人も居る。
けれど今となっては、何が正しくて何が間違ってた等と答えを探した所で意味は無い。
『もう起きてしまった』事実は幾ら時を重ねた所で何も変わりはしないのだから。

考えても同じだ。いや、その根本的な思考そのものを俺は捨てた…――――。

幾度人と出逢った所で俺の中で何かが変化していく何て事は殆ど無い。
例え僅かでも引っ掛かる出来事があったとしても、俺に残したのは傷つけたような爪痕だけだった。

そして瞬時に思う。
人に信頼を寄せた所で爪痕が増えていくだけだと言うのに、一体如何して俺は同じ過ちを繰り返せば気が済むのか。
気付くと、自問自答している時がある。


ある日年甲斐も無く街で赤い風船を貰った。
偶々手を伸ばしたタイミングが合ってしまっただけで貰いたかった訳でも無い。

今はその風船は空を飛んでいる。
小さい頃に同じ様に見た、赤い風船が雲一つ無い澄み晴れた水色の空に一つだけ浮かんでいる。
遙か上まで飛んだ風船を俺は瞬きしながら見上げていた。


「窮屈な空だ…」


飛ばしたのは俺だ。握った筈だった手から擦り抜けた細い糸は離した瞬間から瞬く間に飛んでいく。
上へ、上へと不安定に揺れながらも頼りげなく、けれど確実に風船は高い空を目指していった。
俺が目指すべき道の先には一体何が見えるのか……――――そう思った。
歩く道は相変わらず暗くとも、漠然とした黒さの中で突然弾かれたのは、そこに光があったからだ。


俺が見付けた唯一の光…――――。



「居るよ…」

「…私も居るよ」


その言葉に現実に戻される様に瞼をゆっくりと開けた。
額に寄せてた日七の手を握った儘に目線を向けると、眠ってた筈の日七の瞼が開いて温かな瞳で俺を見詰めていた。

そこで昔母親に言われた、辛い時でも泣いてはいけないと柵に縛り付けられて一切泣かなかった俺の心が氷の様に溶けていく。


けれどあの時、本当は――――泣きたかった…。

ポツ。

一度瞬きすると俺の目尻から一つだけ涙が伝う。


「行…かないで…何処にも行かないでよ……――――ママ」

そう日七が言ったように。俺も母親に本音を曝け出して、泣き喚いてでも縋って。
雨の冷たさは苦手になった。寒くて、嫌な気分を思い出させる。然し、手に落ちたのは同じ水だと言うのに何処までも温かった。

この雨の中走って、走って、お前を見付けられた瞬間に強く思ったんだ。
あの日、母親に捨てられた俺と水溜りの中に座り涙を流す日七の姿が重なった時に――――見ているだけで、もう大事なもんを手離したりするのは充分だと。

そんな俺の涙を見てから、日七はあの時から夢に抱いてきた本当に欲しかった言葉をくれた。



「…私もずっと、アイザックの傍に居るよ」



優しい雨は本音を隠す……最終話 へ続く





超難解な執筆だった…。書いてて本当に辛かった。
ことわざに「子は鎹(かすがい)」がある。夫婦仲が悪くても、子への愛情のおかげで夫婦の縁を切らずにいれるということ。 子が夫婦の縁を保ってくれるということのたとえ。
夫婦の都合で例え母親を失ったなら父親に子への愛や情があったら、必ず詫びたくなるのは当たり前の感情だと思う。あちらの両親の設定と私が作ったのとでは随分違いますが、私は血の通った父親を描きたかったで敢えてこうしました。

私の中のアイザックって内面に秘めてる一箇所が凄く脆くて、それを本人も解ってるんじゃないかと思ってます。S1を見ても弱い自分が解ってるので。

次はいよいよ最終話です。視点を戻して大事に終わらせます。
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