痛みの代償
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徳川家康//関係:恋人//傾向:切ない 【視点:三人称】 ※イベント:あなたの熱でわたしを溶かして。から




『家康様……』


タタタタタ…――――と家康の馬が敵陣とは真逆の地を蹴る。
飛んでくる矢が地面に幾つも刺さるも、距離が離れていけばその数も段々と少なくなった。
けれど家康は夏目との距離が離れるにつれて顔だけを俯くと無意識に奥歯をギリッ、と噛み締める。
悔しいと言葉では表現出来ない、それは絶望的な無念に似た感情が胸に嵐の様に渦巻く。


『――――ありがとうございます』


「…夏目」


戦場から離脱しながらも家康は家臣である夏目の屈託無い微笑を脳裏で刻んでいた。
鶴翼の陣を崩され深手を負った家康の窮地を救ったのは家臣、夏目だった。

止める隙さえ無かった夏目は「私が徳川家康だ」と名乗り最後の命を燃やすかの様に叫ぶと家康の替え玉として敵陣に突っ込んだのである。

単騎で怯む事無く敵の濁流に呑み込まれていく小さな姿が目に焼き付いて離れない。

一体自分は何処を間違った。何処を見失っていた。
馬で走りながら必死に自問自答する家康は、今更失ってしまった大きさを噛み締めた。
まるで魂の一部が剥がれ落ちた様だ。歯を食いしばっておかないと瞬く間に力が抜けて抜け殻になりそうだった。


「……っ」


夏目との出逢いから、まるで馬で疾駆してるかの如く走馬灯が駆け巡る。
然し駆けても、駆けても、見える先には姿など見えない事実だけが家康の胸を貫いた。
ただ唯一残された道があるとしたら、それは残酷にも夏目自身を忘れないことだ――――。

大将の器を問われるとしたら、その痛みさえも全てを受け入れる覚悟がある者だけ。
それ故に家康に泣き事は一切許され無い。否、その痛みさえ況してや存在そのものが無いと当の本人が思っていた。

然し、それは前の刻。


「……そ……――――くそっ!!阿呆がっ!!」


家康は、今やありたっけの声で罵倒する言葉で叫び続けた。
まるで言の葉で創られた鋭い剣で自分自身を傷つける様に、目に見えない何かから血飛沫が噴き出る痛みに似た叫び。
馬で走りながら手綱を握る手が悔しげに震える。それは指先が白くなる程強く食い込んでいた。

『痛み』がそこに、ある。
家康は痛みを初めて知った……――――その指に、そして体の中に埋め込まれた本来あるべき『人の心』というものに。

漸く知り得た痛みの代償は、夏目の命と引き換えだった。
失った真実は永久に胸の片隅へ。痛みは見果てぬ先へと続く、生きてる証となる。

”家康様、今までありがとうございます”


END

Presented by HINANA
Thanks for reading to the end.



家康殿ルートが本当に感動して涙出た。めちゃくちゃ良かった。自分が家康殿推しだったら涙を拭うのがバスタオルじゃ足りなかったかも知れん。この戦で良かった場面もあったけど終わって無いのでそこは黙る。然し変わりつつある家康殿が終始良かった。そして正直エロより此処の場面が一番ぐっときた。因みにシナは撤退時は見せて無いが、きっと家康殿はこうあったに違いない。(理想) 肖像画の忘れない為には、きっと失った痛みを忘れない為にだと思う。
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